縦隔腫瘍は簡単にいうと、喉のあたりから心臓の下あたりの広い範囲、二つの肺に囲まれた胸のあたりの器官の集まりである縦隔エリアに発症する腫瘍のことです。
縦隔腫瘍は自覚症状がない場合が多く、健康診断のレントゲン検査で見つかる事が多いため、指摘されて驚く方もいるかもしれませんが、実は縦隔腫瘍にはいくつもの種類があり、そして普通に生活している中で、誰でもかかる可能性がある病気なのです。
そこで今回は、縦隔腫瘍の詳細と治療法についてご紹介します。
縦隔腫瘍とは?原因と症状と治療の方法
1 縦隔に当たる部分と腫瘍の名称
縦隔に当たる部分は、前部分を胸骨、後ろ部分を胸椎、脇を心外膜、下は横隔膜、上は頸部と広く、心臓や血管リンパ節など、重要な器官が走っています。
縦隔腫瘍には、上縦隔にできる甲状腺腫、前縦隔にできる胸腺腫と奇形腫、気管支原生嚢腫と心膜嚢腫、 後縦隔にできる神経原性腫瘍などあります。
2 上縦隔にできる甲状腺腫
縦隔腫瘍の中でも女性に多いのが甲状腺腫です。
甲状腺は喉仏のすぐ下にあり、ヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作り出し、新陳代謝を促す働きがあります。
他にも髄様ガンや未分化ガン、悪性リンパ腫などがありますがどれも珍しいものです。
3 前縦隔にできる胸腺腫と奇形腫
胸骨の裏側で心臓の上の方にある胸腺は、Tリンパ球と呼ばれる白血球を作っている臓器ですが、子供時代には体の免疫を担う役割をし、大人になると脂肪組織になりますが、胸腺腫は、ここにできる腫瘍で、狭い範囲で広がる事はありますが遠くに転移はしません。進行するスピードが速く、転移しやすいのは胸腺ガンと呼ばれて、共に悪性腫瘍です。
胸腺腫そのものの症状は、初期は無症状なのですが、進行するに従って腫瘍が大きくなり、回りの臓器を圧迫したり、広がったりすることで、咳や痰、胸が痛む、呼吸困難、顔面や首のうっ血や浮腫などの症状が出ます。
そして胸腺腫は、重症筋無力症や赤芽球癆やシェーグレン氏病などの合併症を起こすことがあり、重症筋無力症の場合、夕方になるとまぶたが下がってきたり、飲み込めなくなったり、顔の表情が作りにくい、字が書けないなどの症状が強くなります。
また、赤芽球癆の合併症では貧血になります。
前縦隔にできるに奇形腫は、卵巣や精巣など生殖器の基になる胚芽細胞にできる腫瘍で、別名を胚芽細胞性腫瘍といい、思春期の女の子の場合は卵巣や縦隔にできる場合があります。
その90%は良性腫瘍で、成熟奇形腫、未熟奇形腫、悪性奇形腫などがありますが、悪性の場合は腹痛や腹水、下腹部のしこり、頻尿、便秘などの症状があり、息が苦しくなったりむくんだりし、腹部リンパ節や肺、骨などに転移します。
悪性かどうかはαーフェトプロテインたんぱく質が増えているかどうかで診断します。
4 気管支原生嚢腫と心膜嚢腫は先天性
先天性の嚢腫には、気管支成分からできる気管支原生嚢腫、そして心臓を包んでいる膜の成分からできている心膜嚢腫がありますが、気管支原生嚢腫は赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時に気管支の発達に異常が生じて嚢腫ができるもので、まれに後天性のものもあります。
心膜嚢腫はCTやMRI検査で発見されても良性の場合が多く様子見がほとんどですが、一旦は様子を見る事になり、万が一悪性の疑いが出たり、腫瘍が大きくなりすぎて体に支障が出るようであれば手術します。
5 後縦隔にできる神経原性腫瘍
背中にできる良性の腫瘍で、広がるスピードは比較的ゆっくりですが、周囲を圧迫するようになったら手術で取り除き、悪性の場合は手術と放射線療法を使います。
6 縦隔腫瘍の治療方法
縦隔腫瘍といっても、できる部位は様々で、それによって治療法は違うわけですが、一般的に良性の場合は様子を見て大きくなったら切除します。
もし腫瘍が悪性の場合には、手術、化学療法、放射線治療を組み合わせた治療を行います。
さて、『縦隔腫瘍とは?原因と症状と治療の方法』はいかがでしたか?
縦隔腫瘍は残念ながら原因がわかっていませんが、良性であり発見が早ければ手術で治療することができます。
定期的な健康診断を受けることが、早期発見に繋がりますので、必ず年に1回受けるようにしましょう。
今回ご紹介した内容に関連する記事として
も併せてご覧ください。
今、あなたにオススメ