みぞおちの痛みに悩んだ経験はないでしょうか?
食べ過ぎでもないし、悪いものを食べたわけでもない、病院に行くほどでもないから暫く様子をみようと我慢したり、市販の薬を飲んでみたり。
大抵は「よくある事だから」と気にしないで日常をやり過ごすでしょう。
でも、そのみぞおちの痛みの陰には大きな病気が隠れているかもしれません。
そこで今回は、みぞおちが痛む原因と、痛い場合に疑うべき病気と対処法をご紹介します。
みぞおちが痛いときに疑うべき8つの病気と対処法
1 みぞおちの痛みを伴う急性胃炎の原因と症状
みなさんはみぞおちが体のどの部分にあるかご存知ですか?
みぞおちは、おへその上、胸の下あたり、ちょうど胃があるところを指します。
鍼灸のツボでいえば「鳩尾」と書き、これで「みぞおち」と読みます。
西洋でも同じように感じたのでしょうか、英語でも「Dovetail(鳩の尾)」と書きます。
ではなぜ「みぞおち」と呼ばれるようになったのでしょうか。
その由来は、みぞおちは「水落ち」ともいい、水を飲むと、そのあたりに落ちて冷たさを感じなくなるからだと言われています。
みぞおちの痛みの原因
みぞおちが痛くなる一般的な原因は
食べ過ぎ飲み過ぎによるもの
規則的な食生活から外れ、暴飲暴食したり、寝る前に食べたり、早食いしたりするとみぞおちが痛む事があります。
それは腸が一生懸命に食べ物を消化しようとして頑張り過ぎてしまうからです。
食あたり
いわゆる「水」にあたったり、悪くなった食品を食べたりすると、みぞおちが激しく痛み、同時に下痢を起こす事があります。
けれど、みぞおちの痛みが長引いたり、急に痛み出したりする時は、何等かの病気を疑うべきです。
その一つに急性胃炎があります。
急性胃炎というのは、胃の粘膜に炎症が起きる事です。
急性胃炎の原因
刺激性のもの
アルコール、コーヒー、香辛料、冷たいもの、熱いものをを摂った時、または薬の副作用、ストレスやたばこの吸い過ぎ、さらに不規則な生活を続けた時などに起こるもの
体内からのもの
風邪やインフルエンザ、牛乳、卵、青魚などのアレルギーにより起こるもの
があります。
急性胃炎の症状
急性胃炎の症状には
- みぞおちに不快感がある
- みぞおちがキリキリ痛みだす
- 胸やけがおこる
- 吐き気、おう吐、吐血
- 食欲が落ちる
等があります。
いずれも胃の粘膜がただれる為に起こるものですが、その結果、血管が傷つく事で出血もありうるのです。
その場合、内視鏡検査をし、出血や潰瘍になっている場合は急性胃粘膜病変といいます。
慢性胃炎の症状
急性胃炎を繰り返していると慢性胃炎になります。
- ひどい胸やけ
- 胃の膨満感
- 空腹時や夜に痛みだす
- げっぷ
- 食欲低下
などの症状があります。
最近、慢性胃炎にはヘリコバクターピロリ菌による感染が原因の一つとして考えられるという研究結果があります。
内視鏡検査を受ける事で菌の有無を確認できます。
急性胃炎の治療法
急性胃炎の治療は、その原因を取り除く事から始まります。
ストレスが原因ならそれを取り除き、アレルギーの場合はアレルゲンを取り除くなど。
そしてその後は
- 一旦絶食して胃を休める
- ぬるま湯などの水分補給
- 消化のよいおかゆやうどんなどを少しずつ食べる
- アルコールやコーヒーなどの刺激物は避ける
そして薬による治療を行います。
胃炎の薬のタイプ
胃酸の分泌を抑制するもの
胃が弱っている時には、胃酸が刺激となって痛みを引き起こすので、その胃酸を抑える薬を飲みます。
胃粘膜保護薬
傷ついた胃の粘膜を回復させ、血流をよくする薬で、胃酸分泌薬と一緒に飲むと効果があります。
胃の運動機能を改善する薬
胃の運動を活発にする薬です。胃酸分泌薬と胃粘液保護薬と一緒に使います。
これでよくなればいいのですが、症状が改善しない時は消化器内科へ行く事をお勧めします。
2 みぞおちの痛みを伴う神経性胃炎の原因と症状
神経性胃炎の原因
神経性胃炎とは、胃の炎症がみつからないのに胃が痛む事をいいます。
原因のほとんどが「ストレス」です。
ストレスによって
- 自律神経のバランスが崩れ胃の働きをコントロールできなくなる
- 胃酸が過剰に分泌される
- 胃が収縮する
- 胃の運動機能が低下して消化不良や膨満感が起こる
- 胃の知覚過敏
などが引き起こされます。
神経性胃炎の症状
神経性胃炎の症状は急性胃炎とよく似ていますが
- 薬の効果があまりない
- みぞおちが痛み、熱くなる
- むかむかと胸やけがする
- 胃がもたれる
- 胃酸が逆流して酸っぱいものが上がって来る
- 慢性化しやすい
という特徴があり、症状そのものがストレスになる場合があります。
また悪化すると胃潰瘍になる事もあります。
神経性胃炎の治療法
神経性胃炎の治療法としてはまず、大元にあるストレスを取り除き、薬を服用します。
急性胃炎と同じような薬に加え、場合によっては抗うつ剤や抗不安薬などが処方されます。
3 みぞおちの痛みを伴う胃潰瘍十二指腸潰瘍の原因と症状
胃潰瘍と十二指腸潰瘍はほとんど同じ病気です。
胃潰瘍の原因と発症年代
胃潰瘍は40代以上の人に多く発症します。
胃酸の分泌が少ないのが特徴で、70%がピロリ菌による感染です。
十二指腸潰瘍の原因と年代
十二指腸潰瘍は10代から20代の人に多く発症します。
胃潰瘍と反対に胃酸が沢山出ます。
また、そのほとんど、95%はピロリ菌による感染です。
ピロリ菌以外の原因としてはアスピリンやエヌセッドなどの成分が含まれている関節リウマチ、風邪薬の副作用で起きる場合があります。
胃の粘膜はプロスタグラシンという成分によって胃酸から守られていますが。これらの薬はプロスタグラシンの合成を抑制するので潰瘍が出来るのです。
胃潰瘍十二指腸潰瘍の症状
胃潰瘍の場合は食後30分から1時間くらい後、十二指腸潰瘍はお腹が空いてる時に痛みます。
特に薬の副作用による胃潰瘍はみぞおちが痛くならず、突然吐血したり、治りにくい潰瘍になったりします。
激しい痛みに襲われ、吐血、あるいは下血など出血症状が出た時はすぐに受診しましょう。
4 みぞおちの痛みを伴う胆石の原因と症状
私達の体内にある肝臓では胆汁が作られています。
これは脂肪やたんぱく質の消化を促すもので、肝臓から胆管を通り胆のうに一旦たまります。
食べ物が入ると、胆のうが縮んで胆汁を出し、栄養を吸収するのですが、この胆汁が胆管と胆のうで固まったものを「胆石」と呼びます。
日本人の10人に一人は胆石を持っていると言われます。
胆石の原因
近年、胆石が増えて来た原因として考えられるのは、食事の洋風化によって脂肪の摂取が増え、胆石ができやすくなった事。
もう一つは医学の発達により、症状の出ない胆石の発見も可能になった事です。
胆石の症状
胆石の初期症状としては背中に違和感を感じるというものがあります。
また、油物を食べた後で
- みぞおちが痛くなる
- 右側の一番下の肋骨の裏側が痛む
という症状も現れます。
しかし、胆石はいつも同じ所が痛むというわけではありません。
ある時は背中の筋肉だったり、肩こりのように感じたりする事もあります。
大体は差し込むような痛みを感じてから病院へ行き、発見される事が多いのです。
胆石の治療法
胆石の治療法は3種類あり、
- 溶けるタイプの胆石の場合は薬の服用
- 手術する
- 衝撃波で石を砕く
です。
5 みぞおちの痛みを伴う盲腸の原因と症状
俗に「盲腸」と呼ばれますが、正式には虫垂炎です。
大腸の入口にある盲腸の部分からはみ出ている突き出た場所を「虫垂」といい、そこが炎症を起こすと虫垂炎になります。
虫垂炎の原因はまだはっきりわかっていない
虫垂炎は、まだ原因はよくわかっていませんが、10代から20代が最も多く発症します。
とはいえ、その年代に限っているわけではなく、どの年代でも発症しうる病気である事を理解しましょう。
虫垂炎の症状
虫垂炎の症状として代表的なものに、「右の下腹が痛くなる」というものがあります。
これは、みぞおちやその下にあるへその部分で痛みが発生し、次第に下がって右の下腹に移るからです。
症状が悪化すると腹全体に激しい痛みが出て、腹膜炎をおこします。
また、腹痛と一緒に吐き気や38度近く熱が出る事もあります。
虫垂炎の治療法
虫垂炎の治療法
抗生剤によって炎症を抑える
虫垂炎の初期に行われる事が多いですが、再発の可能性も高いです。
手術
手術で摘出する方法です。腹腔鏡手術と開腹手術があります。
6 みぞおちの痛みを伴う膵炎の原因と症状
膵臓は、食べ物を酵素によって消化や分解する所です。
膵炎の原因
膵炎の原因は、
- アルコールの過剰摂取
- 胆石、内視鏡的膵胆管造影や特殊な薬剤によるもの
- 血液の中に中性脂肪が高くなる脂質異常症
などがあり、これらの原因によって活性化された膵酵素が自分の脾臓を消化してしまい、膵炎になるのです。
膵炎の症状
膵炎の代表的な症状は、みぞおちから左側のお腹の上が背中に向かって痛むことです。
激痛だったり鈍痛だったりします。
他には吐き気、腹部膨満感、発熱、食欲低下などがあり、悪化すると意識を失ったりショック状態に陥る事もあります。
膵炎の治療法
膵炎の治療法は、食べたり飲んだりを一旦やめて安静と点滴、服薬です。
7 みぞおちの痛みを伴う心筋梗塞の原因と症状
心筋梗塞の原因
心筋梗塞は心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなる、いわゆる動脈硬化により起こります。
血液がたまる事で血栓ができ、血が流れなくなるからです。
この冠動脈が閉塞して40分後から、心内膜側の筋肉が壊死します。
これが心筋梗塞で、その範囲は時間とともに広がって行き、最終的に心不全を起こします。
心筋梗塞の症状
心筋梗塞の症状は、突然、胸が痛んだり締め付けるような感じがします。
胸の痛みは30分以上続き。冷や汗をかくことが多いです。
また、みぞおちとその回りに痛みが現れ、呼吸困難や意識障害などが同時に出てくることがあります。
心筋梗塞を起こしたら一刻も早く病院へ行き、処置を受ける事が大事です。
8 今すぐ対処!みぞおちの痛み
みぞおちの痛みは辛いものです。でもすぐに病院にいけない時の対処方法を紹介します。
暫く絶食する
痛みを感じる時は食事をせず、暫く胃に食べ物を入れない様にしましょう。
お風呂に入る
浴槽に少し熱いお湯を張ってゆっくりとつかりましょう。
体を温める事はお腹の痛みに効果的です。
胃薬を飲む
一口に胃薬といっても様々な種類があります。
胃酸分泌抑制剤
シメジチン、塩酸ラニチジン、ファモチジンなどが含まれるH2ブロッカーで、胃の痛み、胸やけ、むかつきなどに効果があります。
制酸剤
荒れた粘膜を修復し、胃酸を中和する成分で銅クロロフィリンカリウム、スクラルファートが含まれています。
胃の痛みや胸やけ、げっぷなどに効果があります。
胃粘膜保護剤
胃酸分泌抑制薬より、優しいタイプの薬です。
抗コリン剤
ベラドンナの果実に含まれるアトロピンやスコポラミンの成分を抗コリン薬と呼ばれます。
胃腸の働きを抑える機能があり、胃の痛みや下痢による腹痛、胆管炎、胆石などに用いられます。
複合胃腸薬
市販されている胃腸薬です。
やみくもに薬を飲むのではなく、自分の症状にあったものを選んで飲みましょう。
また、病院で処方される薬の方が確実に効果を発揮しますので、出来れば病院に行く事をお勧めします。
さて、『みぞおちが痛いときに疑うべき8つの病気と対処法』はいかがでしたか?
人生の中でみぞおちが痛くなる事は結構沢山ありますよね。
でも、「いつもの事だから」と放っておくと大きな病気を引き起こす事になりかねません。
突然、大きな痛みに襲われたり、痛みがあまりにも長引いたり、おう吐や吐血などを伴う時は速やかに受診しましょう。
早期発見、早期治療が痛みを止める最善の方法ですよ!。
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