心の傷であるトラウマは、日常の生活に影響を及ぼすだけでなく、対人関係にも様々な影響を引き起こします。
忘れたいのに忘れることができない、思い出したくないのに思い出してしまう、こういった心の傷は繰り返し心や精神を苛むことになりかねません。
心の傷を癒やすために、病院での治療はどんなことをするのか、また自分自身でそれを癒やし治すことはできるのか、そこで今回は、心の傷を負う原因とその解決法について詳しくご紹介します。
心の傷トラウマを癒すためにできる6つのこと
1 心の傷・トラウマとは
心の傷、もしくはトラウマは心理学や精神医学の専門用語で、外的、もしくは内的な要因から肉体的、また精神的に受けた衝撃をさす言葉ですが、広義的にこの要因による影響から、長期にわたってそのことにとらわれ、体や心が不調をきたすことをいいます。
自分で対処することができないほどの衝撃的な出来事、悲しみ、辛い体験は脳細胞まで変化させてしまい、記憶を司る海馬の萎縮を引き起こすなど、脳に外的な影響を与えて変化させるだけでなく、心を支配します。
そのため辛いことは忘れてしまおう、と押し込めてしまった記憶は普段は思い出すことはありませんが、何かのきっかけで繰り返し思い出すだけでなく、消えるどころか精神的に支配され続けることになるのです。
これらの体験は、実際に自分が体験したことに加え、友人や知人など他人が体験したことを目撃した場合も含まれます。
2 心の傷が再現されることがある?
幼少期に受けた衝撃は、大人になってから様々なことがきっかけで自分で思いもしない形で再現されることがあります。
このように過去の心の傷を再現し、同じような痛みを繰り返そうとする心理には理由があります。
しかし実際に再現しても解決することはほとんどなく、この心の傷は連鎖となって子供の世代に引き継がれ繰り返される可能性があります。
3 心の傷が心や体に与える影響とは?
心の傷は時間の経過によって癒やされることはほとんどなく、むしろ悪化する可能性があります。
さらに心に傷がある状態は、それだけでストレスとなり、心と体に影響を及ぼします。
その具体的な影響を詳しくご紹介します。
4 心の傷を癒やすプロセスとは?
自分ではもう何も辛くない、乗り越えたと思っていても、心の傷はそう簡単に癒えることがないのが現実です。
心の傷を癒やすためには、その原因から解決することが必要です。
心の傷を癒やすプロセスは、①再体験、②解放、③再統合の3つを経ます。
まず、心の傷を思い出すと、強く苦しい感情にとらわれます。
それはそのときの感情が「どうしてそうなってしまったのだろう」という解決できない答えを求め続けることから起こります。
同じ体験をしても「これからどうすればいいだろう、何ができるだろう」と前向きな意思を持つことで、新たな解決法や道が示されます。
再体験の方法としては、自分の体験を人に話したり、文章にまとめる方法があります。
これは自分の体験を客観的にみることで、「もう終わってしまったこと」と脳に言い聞かせることになります。
このことで過去と現在、未来が切り離され、繰り返し思い出してしまう心の傷の連鎖を止めることができ、心が解放されます。
5 心の傷を癒やすために行われる治療法
心に傷を負っている人には、脳に顕著な反応が現れます。
人間の脳は、感覚や感情を司る右脳、そして理性的に物事を考え、記憶を処理する左脳があり、それぞれがバランスを保って活動しています。
しかし心の傷を思い出すと、右脳が興奮状態になり、逆に左脳の活動が低下してしまいます。
この状態を緩和するために、一般的に行われているのが認知療法です。
面接を行い、カウンセリングをすることで、「辛くなったときに浮かぶ考えやイメージ」を修正していく方法です。
薬を服用しない方法として注目されている方法ですが、これにさらにEMDRという方法を付け加えた治療法が行われています。
EMDRとは、心の傷やトラウマの原因となる記憶を思い起こしながら眼球運動を行う療法で、「眼球運動による脱感作および再処理法」を略した言葉です。
左右の目の動き、左右の耳への音の刺激により、バランスの崩れた脳を調整していく方法です。
自分の体験を人に話すことができないといった人にもできる治療法であることから、注目されていますが、専門的な知識が必要なため、自分自身では行わず、かならず専門家の指導を受けてから行うようにしましょう。
6 心の傷を癒やすために自分自身でできること
心の傷を癒やすために、自分自身でできることについて、ご紹介します。
心の傷は自分自身や周りが思っている以上に、心の根深い部分で心や体を支配してしまいます。
心の傷と向き合いたくないがゆえに、アルコールなどに頼ったり、人と話をしたり関わりを絶つことは、逆に心の傷を深め、回復を遅らせてしまいます。
心に傷を負った自分は、間違っていない、傷を負うような体験をしたのだから辛いのは当たり前だ、と受け入れると共に、過去の過ちを悔いるのではなく、これからどうしていけばいいのかを前向きに考えることが、癒やしにつながります。
自分自身でどうすることもできないときには、周りの人や専門家の力を借りることもひとつの方法です。
時間がかかっても、心の傷と向き合い、苦しみや悲しみの連鎖から抜け出すようにしましょう。
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